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マイクロンとSKハイニックスが時価総額1兆ドル到達、サムスンはHBM4E量産前サンプル出荷へ
マイクロンとSKハイニックスがそろって時価総額1兆ドルを突破し、サムスンはHBM4E 12層品のサンプル出荷を開始。一方で機関投資家向けポッドキャストの論調はこの週、ほぼ沈黙していた。
要約(TL;DR)
- マイクロンとSKハイニックスは今週そろって時価総額1兆ドルを突破した。マイクロンは5000億ドルからわずか48営業日でここに到達している。参考までに、NVIDIAは同じ幅を490営業日かけて達成した。
- サムスンはHBM4の量産をようやく立ち上げた段階にありながら、すでにHBM4E 12層積層品のサンプル出荷を開始している。注目すべきはそのペースであり、顧客認証(qual)についてはまだ具体的な情報が出ていない。
- 今週、機関投資家向けのポッドキャストの論調は事実上沈黙していた。見つかった番組はいずれも、2本のニュース速報に反応するリテール向けの解説番組にすぎなかった。詳細を捏造するより、率直に「情報がない」と認める方がよい。詳しくは後述の「情報の空白」を参照。
今週の新しい動き
1. マイクロンの1兆ドル到達、そのきっかけとなった1日で19%の急騰。 The Rundown(Zaid Admani氏、エピソード)によれば、*「マイクロンが時価総額5000億ドルから1兆ドルに到達するまで、わずか48営業日しかかからなかった……2022年から2023年にかけて、NVIDIAが同じ幅を達成するのに490日かかったのとは対照的だ」とのこと。メモリ銘柄でこれほど激しい時価総額倍増の値動きは見たことがない。きっかけとなったのは匿名アナリストによる格上げで、Best Stocks Now with Bill Gunderson(5月27日のエピソード)によれば、マイクロンは「年初来で214%上昇している。3倍になったということだ」*という。この上昇はほぼ全面的にマルチプル(倍率)主導であり、業績予想の上方修正にはまだ支えられていない。次の決算発表が試金石となる。
2. SKハイニックスも1兆ドルの扉をくぐる。 同じGunderson氏の番組によれば、ハイニックスは*「最大11%上昇し、時価総額は1兆ドルの大台を超えた……株価は約231%上昇している」という。「SKハイニックスはNVIDIAにとって不可欠なサプライヤーとなった」*というフレーミングはすでにコンセンサスであり、株価の動きがそれを物語っている。現在、メモリ業界全体で約2兆ドルの時価総額が、「HBMの割当は2027年まで完売済み・価格決定済み」という前提を支えている状態だ。
3. サムスンはHBM4の量産に入ったばかりでHBM4E 12層品のサンプル出荷を開始。 今週、投資テーマとして最も重要なヘッドラインだ。Best Stocks Now(5月29日のエピソード)によれば、*「サムスンがAIメモリ競争で先手を打った。先進的なHBM4Eサンプルの出荷を開始した……12層品のサンプル出荷が始まっている、Barry。12層だ」とし、さらに「この動きは、サムスンがHBM4の量産開始を発表した直後のものだ」*としている。これはあくまでサンプル出荷であり、NVIDIAでの認証取得ではない。サムスンはHBM3E世代では後れを取っていた。焦点は、HBM4Eという世代交代のタイミングが勢力図をリセットし、サムスンがハイニックスからシェアを奪還できるかどうかだ。顧客認証に関する続報はまだない。
4. サスケハナ(Susquehanna)は目標株価を、ほとんどパロディと言えるレベルまで引き上げる。 同じく5月29日の番組によれば、*「同社はマイクロンの目標株価を600ドルから1,750ドルに引き上げた」という。サンディスクについても、「前日終値が1,665ドル」*の銘柄に対し、目標株価を2,000ドルから3,500ドルに引き上げた。1本のレポートで目標株価を1,000ドル単位で動かすというのは、セルサイドがコンセンサス側に乗り遅れまいとするFOMO(乗り遅れ不安)の表れであり、ファンダメンタルズのデータというより、ポジショニングのデータと見るべきだ。
5. サムスン、ベトナムに関する初の具体的な設備投資額が明らかに。 同じく5月27日のエピソードによれば、*「サムスンはベトナムに初の半導体テスト工場を建設するため、15億ドルを投資する予定だ……DRAMの年間生産能力は1,533億ギガビットという巨大な規模になり……NANDの生産能力は255.6ギガビットとなる」*という。出所は環境許認可関連の書類であるため、その前提で扱うべきだが、今週唯一の具体的な生産能力に関する数字である。
強気と弱気の対立軸
強気派(構造的なスーパーサイクル論): AI向けのビット需要は本質的に従来とは異なる、という見方だ。Earn Your Leisure(エピソード)は、現在広がっている「完売」というフレーミングについて、*「2027年までずっと完売状態だ。このストーリーはまだ続くと思う」と述べている。需要の出所については、「NVIDIAであろうと、Googleであろうと、Metaであろうと、XAIであろうと関係ない。製造キャパシティは結局のところTSMCを通る」としている。Gunderson氏の決め台詞は、「DRAM価格はいずれ床が抜けるように下落する……ただ、まだその段階には至っていない」*というものだ。
弱気派(所詮メモリはメモリという見方): Zaid Admani氏が最も明快な弱気論を展開していた。*「少し不安になってきている。メモリは結局コモディティだと思う……メモリはメモリだ。原油のようなものだ……マイクロンが1〜2年のうちに50%以上下落しても驚かない」という。Earn Your Leisureも別の箇所で、「2027年後半にはリストラ(業界再編)が来ると思う」*と述べている。つまり、強気派の論者でさえ、このトレードの時間軸の内側でサイクルが反転することを織り込んでいる、ということだ。
注目銘柄
- マイクロン(MU)。 強気材料: HBMが「完売」という言い回しに象徴される需給の逼迫。1回の格上げで+19%という反応は、まだポジションに余地があることを示唆する。弱気材料: 年初来+214%という上昇は、常に反転してきたサイクルの只中で起きている。値動きのほぼ全てがマルチプル主導であり、業績予想主導ではない。次のカタリスト: 次回決算発表。業績予想が株価倍率に追いつけるか、それとも追いつけないかが試される最初の機会。
- SKハイニックス(000660 KS)。 強気材料: NVIDIA向けのHBM3E/HBM4の既存サプライヤーであること。時価総額1兆ドルという事実がその裏付けとなっている。弱気材料: サムスンのHBM4E認証獲得によるシェア奪取に最もさらされている。次のカタリスト: サムスンのHBM4E顧客認証に関するリーク情報。
- サムスン電子(005930 KS)。 強気材料: HBM4E 12層品のサンプル出荷は、HBMシェアを奪還する最初の本格的なチャンスだ。弱気材料: まだサンプル段階であり、収益貢献はしていない。NVIDIA向けのHBM3E認証も公にはまだない。次のカタリスト: NVIDIAによるHBM4E認証の確認、これが決定的な材料になる。
- サンディスク(SNDK)。 強気材料: サスケハナの目標株価3,500ドル(前日終値1,665ドル比)、NAND需給逼迫のストーリー。弱気材料: セルサイドが目標株価を1,500ドル刻みで動かしていること自体がセンチメントの過熱を示す警告と言える。次のカタリスト: NANDのスポット価格の発表。
- NVIDIA(NVDA)。 需要側のエンジン役。5月27日のエピソードによれば、*「NVIDIAは台湾に年間1,500億ドルを投資する計画だ……4〜5年前、NVIDIAの年間投資額はわずか150億ドル程度だった」*という。この設備投資規模こそが、HBMのビット需要に関する強気論を支えている。
波及効果(Read-throughs)
- メモリ関連装置(アドバンテスト、BESI、Camtek、KLA、Lam、AMAT): 今週は言及ゼロ。HBM4Eによって積層数が12層へと高まっている(サンプル出荷)ことを踏まえれば、ハイブリッドボンディング(BESI)、先端テスト(アドバンテスト)、検査(Camtek)といった論点はもっと語られてしかるべきだ。この沈黙自体を注視する価値がある。
- パッケージング/CoWoS、ハイブリッドボンディング: Earn Your Leisureは、TSMCがあらゆるハイパースケーラー向けアクセラレーターの製造上のボトルネックであると指摘していた。これは有用な視点だが、CoWoSの生産能力に関する具体的な数字は出ていない。
- GPUメーカー(NVDA、AMD): AMDについては言及がわずかにあった程度。今週のHBM需要ストーリーは製品の詳細ではなく、購入側(バイヤー)の設備投資規模を通じて語られていた。
- PC/スマートフォンOEM: メモリコストの価格転嫁についてのコメントはなかった。これほどの需給逼迫が続けば、これは明らかに二次的な圧迫要因になる。Dell、HP、Lenovo、Apple、そしてサムスンのモバイル部門の粗利益率ガイダンスを注視したい。
先週からの変化
最大の変化は「語られなかったこと」だ。Bloomberg、Stratechery、Sharp Tech、Semianalysis、Odd Lots、Asianometry、そして韓国・台湾の経済メディアといった、機関投資家/事業者向けのポッドキャスト界隈は今週、メモリについて沈黙していた。今週の論調は2本のニュース速報によって作られ、それをリテール向け解説者が咀嚼しただけのものだった。今号のトーンは、事業者側のインサイトというよりも、あくまでポジショニング上のセンチメントとして扱うべきだ。
情報の空白(Gaps)
- NVIDIAやAMDにおけるHBM3E/HBM4の認証取得状況の続報なし。
- KGS(良品率)/歩留まり/ビン分割に関するコメントなし。
- DRAM契約価格の方向性(前四半期比)に関する情報なし。
- NANDのスポット価格または契約価格の発表なし。
- ビット供給の伸び(HBMビット対従来型DRAMビット)に関する情報なし。
- 装置メーカー個別銘柄に関するコメントなし。
- 中国メモリ勢(CXMT、YMTC)の動向に関する続報なし。
- ハイパースケーラー各社別のHBM割当に関する詳細情報なし。
来週もこの薄い論調が続くようであれば、エキスパートネットワークやセルサイドの一次情報源へと分析の軸足を移す予定だ。