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SpaceXが史上最大1.77兆ドルのIPOを申請、ブルーオリジンの発射台爆発でAST SpaceMobileの打ち上げが停滞

Connectivity, space and satellite newsletter for the week of May 29 to June 5, 2026. SpaceX filed the largest IPO in history at a $1.77T valuation reframed as an AI-compute story, Blue Origin's New Glenn exploded on its pad and broke AST SpaceMobile's launch math, and SpaceX booked over $6.5B of Space Force defense awards in a single week.

衛星・宇宙通信レース

2026年5月29日〜6月5日の週:SpaceXが史上最大1.77兆ドルのIPOを申請、ブルーオリジンの発射台爆発でAST SpaceMobileの打ち上げが停滞


今週、2つのロケットが打ち上がった。1つは文字通り、もう1つはバリュエーションの上で。SpaceXは人類史上最大となる公募案件のS-1を提出し、一方でブルーオリジンのニューグレンは自社の発射台上で火球を上げた。前者は宇宙関連セクター全体を沸き立たせ、後者はAST SpaceMobileの株価をわずか2営業日でおよそ4分の1削り取った。この宇宙圏に何か保有しているなら、この2つの数字はもはや他人事ではない。

冒頭で1つ、以下をどう重み付けて読むべきかに関わる注意点を挙げておく。今週最も詳細だったASTカバレッジは、自らASTSのロング(買い持ち)であることを公言しているリテール/enthusiast系ポッドキャストによるものだった。その報道は詳細かつ鋭い場合も多いが、彼らが語る手元資金、衛星機数、「通信キャリアが自社に乗り換える」といった主張は、開示資料で裏取りすべきリードとして扱い、鵜呑みにしないこと。発言者は本文中で都度タグ付けしている。数値はすべて特記なき限り米ドル建て。

要約(TL;DR)

  • SpaceXが約1.77兆ドルのIPOを申請(固定価格1株135ドル、調達額約750億ドル、浮動株比率5%未満、6月11日プライシング)。S-1はSpaceXを「AIコンピュートの物語」として再定義しており、AI設備投資はすでにStarlinkとロケット打ち上げ費用の合計を上回っている(Bloomberg Businessweek; Elon Musk Podcast)。
  • ブルーオリジンのニューグレンがLC-36の発射台上で爆発(5月29日頃)。ASTが年末目標の衛星45機体制で当てにしていた打ち上げラインが失われた。ASTS株はその後2日間で約24%下落した(The Rundown)。
  • SpaceXが1週間で65億ドル超の宇宙軍防衛関連受注を獲得(Golden Dome向けS-BAMTIで41.6億ドル、軍用通信バックボーンで22.9億ドル)。宇宙防衛テーマを裏付ける、これまでで最も明快な材料となった(Astronomy Daily)。

今週の新規材料

1. 史上最大のIPO、その実態は静かなAIトレード。 BloombergのAnthony Hughes氏がその構造を整理した。時価総額1.77兆ドル、調達額750億ドル、レンジではなく固定価格1株135ドル、発行株数5億5,500万株、浮動株比率5%未満、6月11日プライシング、マスク氏には1年間のロックアップ(Bloomberg Businessweek)。この宇宙セクターにとって重要なのは資本配分の中身だ。Elon Musk Podcastが伝えたS-1の内容によれば、AI設備投資は127億ドルに達し、Starlinkとロケット打ち上げの合計約80億ドルを上回った。さらにAnthropicは月額約12.5億ドル(年換算150億ドル)を計算資源に支払っており、90日前予告で解約可能な契約となっている。これが数字を動かす理由は、SpaceXが宇宙関連の設備投資を絞ってGPUに資金を回しているのであれば、それはSpaceXの減速を必要とするあらゆるD2D(衛星直接通信)競合にとって構造的な追い風になるからだ。

「現時点では、AI事業そのものはSpaceX社内でまだ最も小さい事業です。中心はあくまでStarlinkと、それが可能にするものです」 Morgan Brennan氏、CNBC(The Pomp Podcast)

2. ニューグレンが爆発し、ASTの打ち上げ計画も共倒れに。 今週最大のハードアセット関連ニュースだ。5月29日頃、LC-36で発生したニューグレン発射台爆発について、CEOのDave Limp氏は「見た目ほど致命的な損害ではない」と主張し、「年内には再び飛ばす」と明言した(Astronomy Daily)。ファンドマネージャーのAndrew Horowitz氏はより率直で、「巨大な火球だった」とし、発射台の修復には「1年近くかかる」と評した(DHUnplugged)。AST専門のホストたちはその中間、6〜7カ月の運用停止で意見が一致しており、ASTSによるニューグレン初打ち上げは2027年1〜2月頃にずれ込み、年末の衛星45機目標は危うくなる(修正レンジとして25〜40機という数字も出ている)としている(Anpanman、リテールenthusiastホスト)。

3. Golden Domeが実際に資金を動かし始めた。 米宇宙軍は、トランプ政権のGolden Dome構想の下でSpaceXに対し41.6億ドルのS-BAMTI(宇宙配備型移動目標指示システム)契約を発注、さらに別途**22.9億ドルの「宇宙データネットワーク・バックボーン」**も発注し、1週間で65億ドル超となった(Astronomy Daily)。S-BAMTIには9社のベンダープールがあり、うち8社は非公開で、他の衛星防衛関連銘柄にとっては一種の「未公開の宝くじ」となっている。関連動向として、ASTはRaytheonでミサイル防衛レーダーに28年間従事したベテランを連邦政府プログラム担当として採用したと報じられており(Kook's Weekly、リテールenthusiastホスト)、Golden Domeへの布石と見られている。

4. Globalstarをめぐる未確認の衝撃的な話。 CNBCのMorgan Brennan氏は、Globalstarについて「Starlinkの対抗馬であるLeoを展開する中でAmazonに買収される」と、事実であるかのように発言した(The Pomp Podcast)。価格も、成立時期も示されておらず、他の情報源による裏付けは一切ない。事実であればGSAT株主にとっては買収イベントとなるが、開示資料やプレスリリースで確認されるまでは、あるアンカーの何気ない発言以上のものとして扱うべきではない。

論点: D2Dの市場規模(TAM)は本物か、それともリテールが見せる幻影か

強気派。 ASTのホストたちは、D2D(衛星直接通信)の市場規模を「商用だけで7,500億ドル、軍用を含めれば1兆ドルをゆうに超える」と見積もり、ASTSはStarlinkのDirect-to-Cellの通信速度約7Mbpsに対し、1セル当たり100〜200Mbpsを実現できると主張する(Kook's Weekly、リテールenthusiastホスト)。決め手となるのは、StarlinkのD2DはEchoStarのスペクトル契約により2028年まで、またStarshipの再使用化により「2029年、2030年」まで制約されているとされる点で、これによりASTは通信キャリアを味方につけた状態で複数年の猶予期間を持つとされる(Anpanman、リテールenthusiastホスト)。

弱気派。 これらの数字はいずれも、enthusiast系ポッドキャストに出演する自称ロング勢からの発言であり、帯域幅や時期に関する主張は未検証だ。一方で弱気材料は今週、より具体的になった。ASTはまだ収益を計上できておらず、主力の打ち上げ手段は今後ほぼ1年間停止し、衛星45機目標はリアルタイムで後退している。市場が示した-24%という「投票結果」こそが、最も説得力のある弱気シナリオだ。そして最も信頼度の高い機関投資家寄りの声(Brennan氏、Bloomberg、Horowitz氏)が今週語っていたのは、SpaceXとロケットの話であって、誰かのD2D市場規模の話ではなかった。

注目銘柄

  • ASTS強気材料: 手元資金30億〜40億ドル超(短期的なATM増資の予定なし)、ブラジルでの10x10MHz帯スペクトル獲得、Raytheon出身者の防衛部門採用、EUの2GHz MSS帯再配分がASTSに有利に働く可能性。弱気材料: ニューグレンの運用停止により衛星45機計画が崩れる、競争力や資金に関する主張の出所がリテール系に偏る。次のカタリスト: Falcon 9によるBB8〜BB10の打ち上げが6月中旬、バッチ2が7月上旬を目標(Anpanman, End of Smash-and-Grab)。
  • RKLB強気材料: Horowitz氏は自身の勘定と顧客勘定の双方でロングを維持しており、同社を「SpaceXの後を追い風に乗る銘柄」と表現している(DHUnplugged)。Brennan氏は再評価(リレーティング)の象徴的銘柄と位置付ける。弱気材料: Neutronロケットでテスト中に「構造上のひび割れ」が発生したと報じられており、Neutronの積載能力は使い捨て仕様でも最大BlueBird衛星3機分にとどまる(Anpanman)。次のカタリスト: Neutronのテスト進捗。
  • GSAT強気材料: (未確認の)Amazonによる買収観測、AppleのSOS機能との提携。弱気材料: 材料が単一の未確認claimに依存している。次のカタリスト: Amazon買収報道を確認または否定する実際の開示。
  • SpaceX(非上場)強気材料: 65億ドル超の防衛関連受注、Starlink収益114億ドル超(180億ドル超の全体売上の60%超)。弱気材料: xAI関連で純損失約50億ドル、累積赤字410億ドル超、Anthropicとの年間150億ドル契約が90日前予告で解約可能。次のカタリスト: 6月11日プライシング/6月12日上場。

波及効果

  • 通信キャリア(VZ、T、TMUS): OppenheimerはAT&Tを格下げしたと報じられており、StarlinkのFixed Wirelessをブロードバンド事業への「日に日に大きくなる脅威」と位置付け、VZとTMUSを選好しているとされる(How the SpaceX IPO Valuation Impacts the Space Sector、伝聞情報)。あるリテール系ホストは「T-MobileはStarlinkからASTSへとD2D戦略を切り替えている」と主張しており、事実であれば投資テーマを一変させる材料だが未検証であり、実際に動く前にMNO(移動体通信事業者)側の公式発表で裏取りすべきだ。
  • EchoStar / SATS: ErgenがスペクトルNote対価として取得したSpaceX株式を通じ、SpaceXのIPOから派生する銘柄。「うまくいけば恩恵を受け、失望を招けば下落する」と評されている(同エピソード)。EUの2GHz MSSルールはSATS/Viasatにとって逆風と読まれている(Kook's Weekly)。整理すれば「欧州スペクトルを軸にASTSロング/SATSショート」というきれいなペアトレードになる。
  • Iridium(IRDM): IRDMについては静かな1週間、「競合」というかすめる程度の言及が1件あった以外、実質的な材料はなかった。
  • 打ち上げ・部品サプライヤー: Tema NASA ETFのCEO、Maurits Pot氏はFirefly(FLY)と(ロンドン上場のSpaceXサプライヤーである)Filtronicを保有銘柄として挙げた(ETF Spotlight)。Intuitive Machinesは今回のラリーに乗じてATM増資(6月3日頃)を実施。ULAのVulcanはSRBノズルの異常2件を受けて運用停止中(復帰は8〜9月見込み)。RelativityのTerran Rは、1回の打ち上げでBlueBird換算約68機分を運べるとされ、注目のワイルドカードとなっている。
  • SpaceX非公開市場のアンカー価格: Temaは、約1.77兆ドルのS-1価格やPolymarketが織り込む2兆ドル超の予想に対し、SpaceXの取得コストベースを1.3兆ドルと評価しており、今回のIPO価格にどれだけ過熱感が織り込まれているかを測るセンチメント指標となっている(ETF Spotlight)。

先週からの変化

先週号はアーカイブで確認できず、行単位でのクリーンな比較ができないため、比較を捏造せず正直に明記しておく。今週、盤面をリセットした2つの新規事実は次の通り。(1)ニューグレン爆発により、ASTの「打ち上げ手段を選ばない」という強みが、短期的な弱みへと転じた。(2)SpaceXのS-1により、AI設備投資が宇宙関連設備投資を上回るシフトが明示的になり、D2D挑戦者陣営にとって新たな追い風材料となった。Amazon/Globalstar案件とT-Mobile/ASTS案件は、影響度が最も大きい未確認材料であり、いずれも単なる噂話からカタリストへと格上げされるには開示資料による裏付けが必要だ。