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ウォーシュ新議長、タカ派色の強い初のFOMCでドルが1年越しの上値抵抗を突破
ケビン・ウォーシュ新FRB議長が初のFOMCでフォワードガイダンスを一新し、ドル指数は1年にわたり抵抗となっていた水準を突破。J.P.モルガンのFXデスクは2026年6月25日週、ドル強気に完全転換した。本号ではこのブレイクアウト、強気派と弱気派のせめぎ合い、そして決着のつかない脱ドル化論争を追う。
The Dollar Brief
2026年6月25日週:ウォーシュ新議長、タカ派色の強い初のFOMCでドルが1年越しの上値抵抗を突破
この2年間、コンセンサス・トレードは「ドル安」だった。しかし今週、新任のFRB議長が初会合に臨み、フォワードガイダンスを一新すると、ドルは逆方向にブレイクアウトした。マイクを持つほぼ全員がこの動きへの反応に週を費やしたため、今号は事実上、一人の人物と一枚のチャートをめぐる話になる。
要点
- ケビン・ウォーシュ議長の初のFOMCは、わずか140語の声明、委員の半数がドットプロットへの参加を見送るという異例の展開、そして利上げをめぐる公然とした議論により、短期金利を再形成し、ドル指数は100近辺で1年間続いていた上値抵抗を突破した。
- J.P.モルガンのFXデスクは弱気から一転、ドル強気へと完全転換し、EUR/USDの目標を110~113へ引き下げた。一方、構造的弱気派(シフ氏、ゼバーグ氏)は「今は楽しめばいい、本当の動きはこの先の危機局面での急騰だ」と主張する。
- 脱ドル化論争は声高だが決着していない。金地金ディーラーは中央銀行が静かに金を買い増していると見る一方、あるJPモルガンのストラテジストは、オンス建てで見ればほとんど増えていないと指摘する。
今週の新展開
ドルはブレイクアウトし、その動きはすべて金利差に起因する。 The KE Reportで、Bannockburn Global ForexのMarc Chandler氏はDXYのブレイクアウトをリアルタイムで指摘した。「今まさに100.6だ……多くの人が下落を予想していた中で、いわばブレイクアウトしている」。同氏は次の目標を102~102.5とし、相場を動かすエンジンが「原油市場から米金利カーブの短期ゾーンへとシフトした」と説明。ドルと2年物利回りの相関は「ここ20年ほどで最も高い水準にある」という。ただし一つ留保もあり、モメンタム指標はすでに「行き過ぎ」の状態だと述べた。
大手セルサイドのデスクが強気論に転じた。 J.P.モルガンのAt Any Rateで、FX戦略責任者Meera Chandanko氏は、米・イラン紛争の最中にドル弱気の見方が転換したと語った。「今や我々はベータに強気であり、ドルにも強気だ、もしそれが両立するならば」。EUR/USDの下値目標である113は、同氏の言葉を借りれば「すでにコンセンサスから外れている」水準で、110も視野に入るという。同僚のPatrick Curran氏は数字で裏付けた。金利差がおよそ100bps拡大すると、ドルの上値余地は約4.5%相当になり、過去の傾向では初回利上げ前の半年間でドル全体は平均約5%上昇するという。
ウォーシュ議長のデビューが引き金となり、それは真の意味でのレジームチェンジだった。 元ダラス連銀アドバイザーのDanielle DiMartino Booth氏はThe Julia La Roche Showで同氏を10点満点中9点と評価し、フォワードガイダンスを欠く「蚊が鳴くような」声明と、ウォーシュ氏が「非農業部門雇用者数のデータなど自分は追っていない」と世界に告げたことを描写した。Whalen Global AdvisorsのChris Whalen氏は同番組のChris Whalen回でこれを「転換点」と呼んだ。「FRBに関しては、少ない方がいいこともある……ある程度の神秘性を保つのは良いことだ」。ファンドマネージャーのAxel Merk氏はThoughtful Moneyで、市場が初回利上げの織り込みを9月へと前倒ししたことに触れ、示唆的に「30年債は売られなかった……それこそ彼が狙いを達成した証だ」と述べた。
ステーブルコインは「テーマ」から「決済インフラ」へと位置づけを変えた。 GENIUS法が成立した今、元CFTCコミッショナーで現MoonPay所属のCaroline Pham氏はThe Wolf Of All Streetsで、2026年第1四半期だけで「ステーブルコインの取引高は28兆ドルに達した」とし、その決済網は「ACHやSWIFTを凌駕している」と述べた。EcoのCEO、Ryan Sachs氏はCRYPTO 101で、GENIUS法を解禁材料として位置づけた。「少なくとも、どの担保が認められるかという明確さは得られた。それで十分だ」。ドルとの関係でいえば、その99%がドル建てのステーブルコインは、静かにドル需要と米短期国債(Tビル)需要を海外へと輸出している。
論争
ドル強気派 対 ドル弱気派。 強気論は循環的で明快だ。米国が利上げへとじりじり歩を進める一方、他国はそこから遠ざかっている。RenMacのNeil Dutta氏はRenMac Off-Scriptで率直にこう述べた。「政策金利差がいわば天秤を強いドル方向に傾けている……ほとんどのG10通貨に対してドルをロングにしたくなる十分な理由だ」。ファンドマネージャーのBrent Johnson氏はMacroVoices #537で、構造的な観点からこう位置づけた。ドルは「85から105」というレンジの中で機能しており、今はそのレンジの上限近くにいる、と。
弱気派は目先の強さそのものは否定しないが、それに逆張りするのは誤りだと主張する。The Julia La Roche Showで、Peter Schiff氏はドル指数について「本格的な下落が始まるには90を割り込む必要がある」と主張し、10年債利回りは5%に向かうとした。Wealthionでは、Henrik Zeberg氏がバーベル型のシナリオを描いた。まず94近辺への調整、その後、ドル・ショートに傾いた世界が資金繰りに殺到する中で危機主導の急騰があり「ドル指数(Dixie)は120を超える」というものだ。
脱ドル化は実態か、それともグラフ上の話か。 金取引の現場からは、買い増しは実際に起きているが過小報告されているとの声が上がる。Thoughtful Moneyで、地金ディーラーのAndy Schectman氏は、中央銀行の公式な買い増し報告は「前四半期で15トン」だったが、World Gold Councilの精製データからは「実際の数字は244トンだと示唆される……これは混乱ではなく、意図的なポジショニングだ」と主張した(念のため補足すると、Schectman氏および同じく金相場に強気な論者であるAndrew McGuire氏は、Kinesis Moneyでともに自らが取り上げている資産そのものを販売する立場にあり、そのトン数の主張には利害関係があるとみなすべきだ)。これに対する反論はJPモルガン内部から出た。Eye On The Marketで、Michael Cembalest氏は、中央銀行は「既存保有分の評価額の上振れという恩恵を受けているだけで、トロイオンス建てで見た配分自体はほとんど変わっていない」と述べ、これは価格効果であって資産逃避ではないとした。Johnson氏は両者の中間を取り、「脱ドル化はおおむね神話だ」とする。貿易建値も国境を越えた与信も、依然としてドル依存度は変わらず高いためだ。
注目トレード
- EUR/USDショートで110~113を目指し、USD/JPYロングで下半期に164を目指す。J.P.モルガンがAt Any Rateで示した具体的なトレード表現。
- 政策金利差トレードとして主要G10通貨に対しドルをロングする。Neil Dutta氏、RenMac Off-Scriptより。
- キャリートレードを「スイッチ役」として注視する。 Blockworksの Tyler 氏はForward Guidanceで、ドル高が「世界のどこか他の場所で何かを壊し始めれば、逆方向のキャリートレードが発生する」と警告した。あくまで論者個人の見立てだが、注視すべき論点ではある。
波及効果
- FRBが寡黙になるほど、債券市場は雄弁になる。 ウォーシュ氏が事前コミットを拒む以上、市場を語るのは短期金利の役目となり、利上げ観測の急速な織り込みこそがドルのさらなる上値余地への最も分かりやすい経路となる。10月/9月の利上げ織り込みが維持されるかを注視すべきだ。
- FRBと財務省の連携が、強気シナリオの下でのテールリスクとなる。 Johnson氏はThe Wolf Of All Streetsでこう述べた。「ベセントとウォーシュは金利を下げたがっている……今後、FRBと財務省がこれまで以上に緊密に連携する場面が見られるだろう」。真にタカ派なウォーシュ氏と、中間選挙に向けて低コストの資金調達を望むホワイトハウスとの間には、未解決の緊張関係がある。
- クック氏をめぐる裁判に注目。 Chandler氏は、トランプ氏がクック理事を解任できるかをめぐる連邦最高裁の判断が近く下される点に言及し、もしトランプ氏に有利な判断が出れば「大統領はパウエル議長を含む他の何人かの解任も試みるかもしれない」と指摘した。これはドルに政治リスク・ディスカウントを一気に呼び戻しかねない見出しだ。
何が変わったか
今週はドルをめぐるナラティブが逆転した週だった。市場はこの2年間、ドル安を前提にポジションを組んできたが、新任のFRB議長とタカ派色の強い一度の会合が、大手デスク(J.P.モルガン)をドル強気へと転換させ、初回利上げの織り込みを第3四半期へと引き寄せ、DXYを1年にわたり尊重されてきた上値抵抗の先へと押し上げた。弱気シナリオは消えたわけではなく、「もっと先で、もっと大きく」という形へと先送りされただけだ。