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3万ドルの壁、欧州の開かれた扉、そしてモービルアイの空虚なプレスリリース

The Auto Disruption、2026年6月22日〜29日号。EV需要は底を打ちつつあるが、それは欧米自動車メーカーがまだ到達できない価格帯に限られる。中国は欧州が閉めるかどうか決めかねている扉を通り抜け続け、ロボタクシーを巡る物語は東西両海岸で現実を突きつけられた。

The Auto Disruption

2026年6月29日号:3万ドルの壁、欧州の開かれた扉、そしてモービルアイの空虚なプレスリリース


2026年6月22日〜29日号

今週、ポッドキャスト界隈は一つの居心地の悪い真実を巡って議論した。EVシフトは失速したのではなく、価格が再設定されたのだ。需要は底を打ちつつあるが、それは欧米の自動車メーカーがほぼどこも到達できていない価格帯・コスト構造に限られる。中国は欧州が閉めるかどうか決めかねている扉を通り抜け続け、ロボタクシーを巡る物語は東西両海岸で現実を突きつけられた。共通するテーマは一つ、経済性が野心にようやく追いついてきたということだ。

1. EV需要:後退ではなく転換、それでも合わない採算

まずは良いニュースから、わずかながら存在する。米国のEV新規登録台数は、年初の厳しいスタートから持ち直しつつある。Automotive News のリンゼイ・ヴァンハル(Lindsay VanHulle)氏は6月15日の『Daily Drive』でS&Pグローバル・モビリティのデータを示した。前年同月比の登録台数の落ち込みは1月の-41%から4月にはわずか-9.8%まで縮小し、テスラのModel Yは4月単月で61%増となった。同氏の見立てでは、昨秋に7,500ドルの連邦税額控除が失効した後、市場は「足場を固めつつある」という。この「後退ではなく転換だ」という捉え方は、『EVs for Everyone』(6月18日)でも繰り返された。各種プログラムは現在キャンセルや縮小が相次いでいるものの、次世代の低コストEVへの投資は続いているという。

問題は、その「足場」を得るのに何を犠牲にしているかだ。『Consumerpedia』(6月18日)でコックス・オートモーティブのデータを引用したところによれば、3月の新車EVの平均取引価格は約55,000ドルで、全車種平均の約47,000ドルを大きく上回る。ジャーナリストのポール・アイゼンシュタイン(Paul Eisenstein)氏は、ホンダが1957年の上場以来初となる通期赤字を計上したと指摘し、その主因はEV戦略の後退にあるとした(いずれも発言者が第三者データを引用した数値)。

今週の経営者の声。 フォードCEOのジム・ファーリー(Jim Farley)氏は、再放送された『Decoder with Nilay Patel』(6月25日)で、米国OEMトップから聞いた中で最も率直にこのジレンマを言語化した。「米国で3万ドルの手頃なEVを売っても、製造コストが5万ドルかかるなら……それは持続可能なビジネスではない」。ファーリー氏は、3万ドルが「[マスマーケットの購入者が]支払いたいと思う上限額」であり、BYDのバッテリーは垂直統合により「我々がCATLから調達する価格より30%安い」と述べた。フォードの回答である2027年投入予定の「ユニバーサルEVプラットフォーム」は、事実上、セルコストで勝てないためにモーターとドライブトレインを再設計し、バッテリー使用量を30%減らすしかないという告白に等しい。これは製品ロードマップではなく、生存計画だ(バッテリーのコスト差に関する数値はファーリー氏自身の発言であり、外部で検証されていない)。

識者たちも同じ分岐点を見ている。6月27日の『Daily Drive』では、Automotive Newsのパネリストが、2024年の選挙による方針の揺り戻しが業界を新型車の「プロダクト砂漠」に追い込んだと論じた。実際に投入されているのは大半がハイブリッド車だ。EV規制を追いかけてこなかったトヨタは「これまでの路線を堅持したことの果実を刈り取っている」という。我々の受け止めはこうだ。手頃な価格のEVを巡る競争は、いまやEVレースそのものであり、既存メーカーがビハインドを背負ってスタートするコストエンジニアリングの戦いである。

2. 中国の輸出と関税:欧州にとっての「チャイナショック2.0」と、閉まらない扉

米国の物語がコストを巡るものだとすれば、欧州の物語は政治がコストの変化に追いついていないことを巡るものだ。今週最も注目すべきエピソードは『The Sound of Economics』(6月23日)で、ブリューゲル研究所のアリシア・ガルシア=エレーロ(Alicia Garcia-Herrero)氏がEUの手続き上の罠を解剖した。既存のEV関税は、その撤回に特定多数決が必要だったために可決された、つまりドイツは票で押し切られた形だ。しかし新たな「産業アクセラレーター法」は承認に特定多数決を必要とする。「スペインとドイツが反対に回る可能性が高いだけでも、特定多数決を得て可決するのは非常に難しくなるだろう」。仕組みそのものが、保護主義者にとって不利な方向に反転してしまったのだ。同氏はまた、欧州がエスカレートさせれば中国は「あなた方を壊滅させる」という北京側の強硬姿勢をそのまま伝えた。背景にはEUと中国の間で3,600億ユーロに上る貿易赤字と、欧州の自動車関連1,500万人の雇用があるという(貿易統計は発言者による主張)。

信用面から見ても状況は厳しい。『Know More. Risk Better.』(6月18日)でアナリストのジェームズ・ベヴァン(James Bevan)氏は、中国ブランドの欧州市場シェアが2024年の3%から「10%近く」まで上昇したと指摘し、そのペースは1970年代に日本メーカーが米国市場に浸透した速度を上回るとした。同氏はBMWの利益警告(中国での販売台数が年初来計画比で「ほぼ20%減」)にも言及し、中国勢の戦略を「アマゾン方式」、つまり今は赤字を出してでもシェアを取り、ドイツやフランス(時給約45ユーロ)ではなくハンガリー(時給約15ユーロ)で現地生産する、と表現した。同氏の見立てでは、既存メーカーが構造的なコスト面で対等になるには何年にも及ぶ痛みを伴う再編が必要だという(数値はすべてベヴァン氏の推計であり、未検証)。

米国との対比、経営者の声。 自動車業界団体トップのジョン・ボゼラ(John Bozzella)氏は、6月23日の『Daily Drive』で、7月1日のUSMCA再交渉を前にこの脅威を再定義した。「課題は中国企業と競争することではない。中国という国家と競争することだ」。中国製車両に対する米国の関税がすでに100%を超えている中、同氏の主張は、北米が意味のある水準で手頃なコストで生産できる唯一の「競争力の土台」は、USMCAを損なわずに維持することだ、というものだ。

そして扉は他の地域でも開き続けている。西側企業との合弁の内側で事業を行う中国系ブランドが、『Everything Electric』(6月22日)でその手の内を見せた。Leap Motorの英国事業責任者は、サンルーフ、アルミホイール、アダプティブクルーズコントロール付きのEVを14,495ポンドで訴求し、Leapの購入者の95%はステランティス(Stellantis)にとって新規顧客だと述べた。南アフリカでは中国ブランドのシェアが17%近くに達し、Cheryは現地生産を進めている(『The Money Show』、6月26日)。フィリピンではBYDがわずか3年で第3位の自動車ディストリビューターに躍進した(『BRAVE Southeast Asia Tech』、6月28日)。6月23日の『Daily Drive』によれば、BYDの会長は2030年までにトヨタを追い抜く意向で、460万台から約1,130万台へと倍以上に引き上げる計画だという(BYDの年次総会からの伝聞情報であり、未検証)。

3. ロボタクシー:モービルアイの賭け、Waymoのリコール、テスラの静かな一周年

今週最も話題を呼んだロボタクシーのニュースは、戦略の180度転換だった。モービルアイは6月16日、単なるチップサプライヤーではなく垂直統合型のロボタクシー運行事業者になると発表し、この件は3つの番組で徹底的に分析された。独立系アナリスト集団Autonomy AIは、『The Road to Autonomy』(6月18日)『Autonomy Markets』(6月27日)の双方で率直に語った。プレスリリースには都市名の記載も、許可の開示も、施設の言及もなく、「SECへの届け出も……ゼロ、皆無、何もない」。彼らの例えでは「これはブラックベリーのようだ」、つまり誰もプラットフォームを買ってくれないため、自ら製品を作らざるを得なくなったサプライヤーだという。またアルファベットがWaymoにこれまで300億ドル超を投じてきたとされることを引き合いに、核心的な問いを「モービルアイにこの戦いを続けるだけの体力はあるのか」と位置づけた(資金・投資額は発言者の主張による)。

業界のリーダーであるWaymoでさえつまずいた。GMの元研究開発責任者ラリー・バーンズ(Larry Burns)氏は、『Autoline After Hours』(6月22日)でWaymoが受けたNHTSAの2件のリコールを詳しく解説した。1件は5月、無人車両が冠水した道路でサンアントニオの用水路に流されたことを受けたもの、もう1件は6月、閉鎖された工事区間を認識できなかったことによるものだ。同氏の評価は強気だった。「私はこれを歓迎する。なぜならWaymoは透明性を保ったからだ……どちらの問題もOTA(無線)アップデートで容易に解決できる」。Waymoは11都市で週50万件超の有料乗車があると報じられており(『InsideEVs Plugged-In』、6月19日)、これに照らせば今回のリコールは成長の痛みであって、投資テーゼを揺るがすものではないと読める。

対照的にテスラは、オースティンでのロボタクシー展開開始から1周年を迎えたが、Autonomy AIはこれを「あまりハッピーとは言えない誕生日」と評した。丸1年経ってもなお車両100台の節目に届いておらず、その一方でCybercabのEPA申請書類からは実際のスペック(車両重量約3,100ポンド、バッテリー48kWh、補正後航続距離約293マイル)が明らかになった。最も鋭い投資家目線のフレーミングは、TD Cowen TMTカンファレンス(6月15日)でのVC、アレックス・ロイ(Alex Roy)氏の発言だ。「Waymoはすでにそこにいる。テスラはいずれそこに到達するだろう」。同氏によれば、勝負の全体像は、テスラがWaymo並みの無人走行安全性に到達する前に、WaymoがIPOを果たし持続可能な経済性に達せられるかどうかにかかっている。もしテスラが先にそのギャップを埋めてしまえば、Waymoの資金調達の窓は閉じてしまうからだ。

注目していること

  • 7月1日開始のUSMCA再交渉。 ボゼラ氏の「競争力の土台」というテーゼが最初の試練を迎える。
  • テスラの第2四半期納車台数レポート。 補助金なしで縮小する市場の中でテスラのシェアが上昇していることに隠れた、米国の弱い数字を評論家たちは警戒している。
  • モービルアイが運行事業者への転換に、具体的な都市・許可・パートナーを一つでも示せるか。 それが示されるまでは、今回の発表はポジショニングとして受け止めるべきだ。