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最高裁判決後も残る関税負担、現場企業が具体的な金額を提示

Trade war, tariffs and reshoring podcast recap for the week of June 22-29, 2026. Operators from Detroit Axle, Ford and ADF Group put hard dollar figures on a stackable tariff bill that survives the Supreme Court rollback, the July 1 USMCA clock points toward a 10-year review, and the reshoring story merged with the automation and grid build-out.

貿易戦争・関税・リショアリング ウィークリー

2026年6月29日の週:最高裁判決後も残る関税負担、現場企業が具体的な金額を提示


今週の通底テーマはこうだ。関税はもはや見出しではなく、P&L上で計測される一項目になった。現場企業からは実際に支払っている金額の具体的な数字が示され、USMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の期限は7月1日の決定に向けてカウントダウンを始め、リショアリング(製造業の国内回帰)の物語は静かに自動化と送電網整備の物語と融合しつつある。なぜなら、ロボットなしに工場を国内に呼び戻すことはできず、変圧器なしにそれを稼働させる電力を確保できないからだ。以下、まず現場企業の声、続いて識者の見解を紹介する。

1. 関税:負担は現実であり、しかも積み重なる

現場企業。 今週最も有用な数字は、Detroit AxleのCEO、Mike Muschinich氏から出た。同氏はInsight On Business「Fighting the Tariffs with Detroit Axle」(6/24)で、この自動車部品会社が「2024年に連邦政府へ支払った関税1,280万ドルから、2025年には7,000万ドルへ」増加し、実効税率は「72.5%」に達したと語った。最高裁による関税巻き戻しについての同氏の見立ては、関税緩和をモデル化しようとする者にとって厳しいものだ。「最高裁が72.5%のうち10%を返してくれる…彼らが撤廃したのはそれだけだ」。同氏はまた、廃止されたデミニミス免税(800ドル未満の荷物が無関税となる制度、年間約15億ドル規模)を巡って国際貿易裁判所(Court of International Trade)に提訴している。ポートフォリオマネージャーにとっての要点は、法廷での「勝利」が積み上がった関税負担をほとんど削っていないという事実だ。

Fordのジム・ファーリー氏は同じ問題をより大きなスケールで示した。Decoder with Nilay Patel「CEO Jim Farley on Ford's EV gamble」(6/25)によれば、単一四半期で「8億ドル」の関税負担、輸入部品に対して「20億ドルの請求書」、鉄鋼・アルミニウム関税は「今や50%超」、さらに「フェンタニル関税、中国に対する301条関税」が「すべて積み重なる」という。同氏の結論は「これらの部品関税のせいで、当社の利益の約20%が消えている」というものだ。同氏が指摘した非対称性にも注目したい。完成車の輸入関税は「約15%、日本からは12.5%程度」に落ち着きそうな一方、米国内で製造されるトラックは投入材で50%超の関税を負担する。これは単なるコスト増ではなく、競争上の楔(くさび)になっている。

カナダの鉄骨加工会社ADF Group(DRX.TO)は、最も精緻な現場からの見立てをMicroCapClub「ADF Group: The Backbone of America's Biggest Builds」(6/25)で示した。同社の製品はUSMCAの定義を満たすため、カナダ工場から出荷される米国向けプロジェクトへの実質的な負担は現在「商業インボイスの10%…通常の利益率の10%相当」にとどまる(見出し関税は当初50%、その後25%だった)。より大きな話は間接的な影響だ。「米国内の製鉄所はすべて…価格を約25%引き上げた」といい、「関税の最大の影響は、あらゆる不確実性そのものだ」という。強気材料としては、生産能力が逼迫しているため米国の顧客側が順番待ちの列を飛ばすために自ら関税を負担すると申し出るようになっており、受注残は過去最高の約6億5,000万カナダドル、さらに関税免除対象となるモンタナ工場も抱えている。

識者。 政策の時計については、CSISのビル・ラインシュ氏がThe Trade Guys「USMCA Review, G7 Summit, and the EU-U.S. Trade Deal」(6/23)で、7月1日の期限がUSMCAの更新には至らない可能性がほぼ確実だと語った(7月20日に予定されているメキシコ会合はスケジュールの遅延を示唆している)。代わりに「10年間の見直しプロセスが始動する」ことになり、合意は「選挙前の9月か10月」に成立し、実績として喧伝される可能性が高いという。トランプ氏の「USMCAは必要ない」という発言は、ラインシュ氏の見立てでは「脅しであり…誰もがそれを脅しだと分かっている」。リスク管理上の翻訳をすれば、USMCAを巡る見出しリスクは第3四半期を通じて生き続けるが、正式な離脱の確率は低い。

2. リショアリング:労働コストの計算がついに国内回帰へ傾く

現場企業。 U.S. Manufacturing Today「The Battery Belt Talent Crunch」(6/23)に出演したグリーンフィールド(新設)製造業向けの人材紹介会社は、オフショアリングを後押ししてきた労働コスト格差が逆転しつつある最も明確な兆候を示した。先端製造業の給与は「12カ月で18%」上昇しており、募集要項に記載された給与レンジは市場実勢より「18〜24カ月遅れ」ているという。これは長らく予測されてきた賃金収斂がついに「現実味を帯びてきた」ことを意味するが、同時にリショアリングした工場が採算を取るには自動化が不可欠であることも示している。それはまさに、防衛産業向け機械工場のオーナー、Andrew Borg氏がMachine Shop Mastery「How Borg Design Built a 50-Machine Defense Manufacturing Powerhouse」(6/24)で語った内容そのものだ。同社の計画は「売上を倍増させつつ、従業員数の増加は約50%程度に抑える」というもので、機械は無人で「24時間稼働」する。同氏の業界の見立てはこうだ。「防衛・航空宇宙分野はどこにも行かない…医療分野は多くがリショアリングしている。世界の他地域で作られていたものが、今はここ(米国)で作られているケースを数多く目にする」。

ニアショアリング(近隣国への生産移管)についての対照的な視点として、貨物輸送業者は「静かにメキシコ国内へと移動している」とWHAT THE TRUCK?!?(6/22)は伝えている。つまりリショアリングは米国だけの物語ではなく、北米のサプライチェーン全体が再編される動きであり、それゆえUSMCAの存続(第1章参照)こそが要となる変数だ。

識者。 Essex CapitalのNancy Prial氏はSchwab Network(6/23)で、株式ポートフォリオ向けにこのトレードを整理し、リショアリングをインフラ・エネルギーと並んで、中小型工業株にとって過小評価されている成長ドライバーだと位置づけた。粒度の粗い見立てではあるが、バイサイドのローテーション物語が向かう先を示している。

3. 自動化とヒューマノイド:資本市場がついにお墨付きを与えた

現場企業/業界関係者。 今週最大のシグナルとなる出来事は、Agility Roboticsが上場し「約6億2,000万ドル」を調達してヒューマノイドロボット「Digit」の拡大を図ることだ。Digitはすでに「製造、物流、ロジスティクス分野に…慢性的な肉体労働力不足を埋めるために」導入されている。Logistics Matters with DC VELOCITY(6/26)より。同番組は、より着実な投資対象も示唆している。Interact Analysisのレポートによれば、ロボットアーム(産業用アーム)メーカーは、ヒューマノイドベンダーが自社開発ではなく協働ロボット(コボット)グレードのアームを購入するようになることで、「2030年までに売上が最大30%増加する可能性がある」という。リスクが低い投資対象は、見出しを飾るヒューマノイド本体ではなく、この部品サプライヤー層だ。Gray OrangeのCTOはMachine Minds(6/24)で、倉庫レイヤーの数字を挙げた。産業用ロボットの導入台数は「今後数年で10倍」になる見込みで、差別化の鍵はオーケストレーション(制御・統合)ソフトウェアだという。

専門家。 ETHチューリッヒのニキータ・ルーディン(Nikita Rudin)氏はThe Neuron: AI Explained(6/26)で、ロボットハードウェアのコストがこの2年で「数十万ドルから数千ドルへ」下落したと指摘した。これは中国の製造規模がもたらしたコスト曲線であり、誰が利益を獲得するかを見極める上で注目に値する。またDaybreak(6/25)は、Tesla、Figure AI、NVIDIAがヒューマノイドの訓練用に一人称視点の映像を買い集めていると報じ、イーロン・マスク氏はロボティクスが「Teslaの売上のはるかに大きな部分を占めるようになる」と改めて述べた。

4. インフラと送電網:最もクリーンな「ピック・アンド・ショベル」トレード

投資家。 最も実践的な銘柄レベルの分析は、POW ETFのDavid Trainer氏とAdam Snavely氏によるものだった。ETF Spotlight「Beyond the Mag 7」(6/22)によれば、ボトルネックは発電(送電網設備投資の約15%)ではなく送配電にあり、「変圧器の80%は輸入品」だという。両氏が推す銘柄は、LS Electric(「電力の交通整理役」)、Delta Electronics(「プラグの両端に君臨する静かな巨人」)、Hyosung Heavy Industries(「大型変圧器の王者」)で、いずれもAI需要とは独立して進むアップグレードサイクルの恩恵を受けるという。新興国株運用者のIan Smith氏も同様の戦略をExcess Returns(6/22)でなぞり、「上流から始めよ…ピック・アンド・ショベル(採掘道具、つまり周辺インフラ)に」注目すべきで、それは「韓国、台湾、続いて中国」に集中していると述べた。

電力関連の大型契約は需要の裏付けを続けている。Microsoft-Chevronは「GE Vernovaのタービンを使い、西テキサスに2.67ギガワットのAIデータセンター能力」を建設する計画で、Caterpillarがサプライヤーとして関わる。Squawk on the Street(6/22)より。LenovoのCFO、Winston Wong氏はOdd Lots(6/27)で、自社は「最短6カ月」でデータセンターを立ち上げられると語る一方、部材の制約(メモリ、電力、土地)は「今後2〜3年は続く」と警告した。

懐疑派の警告。 2人の識者が崖(クリフ)リスクを指摘した。特筆すべきはSmith氏の警告で、建設拡大局面が終わると、長納期の電力設備メーカーは「非常に急激で唐突な需要の落ち込み」に直面するという。投資家が「フロー(新規需要)とストック(既存設備の蓄積)を混同している」ためで、新規受注がゼロに近づいても設置済みの基盤は増え続けるからだ。GMOの資産配分責任者はExcess Returns(6/24)で、約7,000億ドル(米国GDPの約2.2%)に及ぶデータセンター投資を、1990年代の光ファイバー整備や1900年代初頭の電化と並べて論じた。これらはいずれも変革的な技術でありながら、「建設を担った企業にとっては歴史的にうまくいかなかった」ケースだという。

注目すべきポイント

  • 7月1日のUSMCA決定 はおそらく更新ではなく10年間の見直しプロセスを引き起こす。自動車・農業のサプライチェーンが見出しリスクを抱える。
  • 関税の「緩和」は市場が織り込むより限定的だ 積み上がった負担は最高裁判決後も生き残る。巻き戻しではなく、残存分をモデル化すべきだ。
  • リショアリングのトレードは自動化+送電網のトレードでもある 労働コストが国内回帰へと収斂しつつあるが、それが採算に乗るのはロボットと変圧器があってこそだ。看板銘柄よりも部品サプライヤーを優先し、弱気派が指摘する長納期設備の「空白期間」リスクにも留意すべきだ。