Newsletter · · Ashutosh Agarwal

マイクロン、営業利益でNvidiaを凌駕。メモリーは2028年に向け再評価へ

2026年6月30日付のAI Capex Tracker。マイクロンの記録的な決算がメモリーをインフラとして再評価させ、議論を需要から供給へと引き戻す一方、クアルコムのHBM不要のデータセンター参入と2028年の供給過剰懸念が次の争点として浮上した。

The AI Capex Tracker

2026年6月30日:マイクロン、営業利益でNvidiaを凌駕。メモリーは2028年に向け再評価へ


発行日: 2026年6月30日(火)

要約(TL;DR)

  • マイクロンの決算は単なる好決算にとどまらず、メモリーをインフラとして再評価させた。 DRAM価格は前四半期比で約60%上昇、NANDは約80%上昇、HBMは前年比300%超の伸び。粗利率はかつての平均10%台前半から一気に75〜85%へ。専門アナリストは、マイクロンが今四半期、Nvidiaよりも大きな営業利益を計上する可能性があると見ている。(The Circuit, 6月29日TBPN, 6月29日
  • 2028年に向けた「供給戦争」リスクが初めて信頼に足る形で相場に現れた。 市場モデルでは、マイクロンが2028〜29年にかけてSK Hynixのウエハー生産量に迫る勢いを見せると予想されており(現行シェア約20%からの拡大)、サムスンは数千億ドル規模の増産計画を「リーク」し、中国の代替供給元CXMTも歩留まりの差を縮めつつある。強気筋の根拠は長期契約の固定化、弱気筋の根拠はメモリーが依然としてコモディティであるという点だ。(The Circuit, 6月29日Real Vision Macro Mondays, 6月29日
  • クアルコムがHBMなしでデータセンター市場に参入し、MicrosoftとMetaが採用を決めた。 HBMを使わず、LPDDR上で演算処理を行う「大幅な低コスト」アーキテクチャに加え、800Gから3.3Tへと進化するネットワーキング・ロードマップを打ち出した。メモリー税とNvidiaのHBMマークアップに対する直接的な挑戦である。(The Six Five, 6月29日

今週の新展開

前号では「誰がトークン代を払うのか」が論点だったが、マイクロンの記録的な決算がそれを一気に供給側の議論へと引き戻し、弱気派は新たな論拠を探すことを迫られた。

1. マイクロンがAIトレード全体をメモリー・トレードとして再定義した。 The Circuit, 6月29日、Ben BajarinとJay Goldberg(半導体専門アナリスト)。

目を引く数字は、前四半期比60%の価格上昇、しかもすでに2倍の水準で締結済みの契約に上乗せしての数字だ。HBMは前年比「300%超」。粗利率は現在**75〜85%**で、マイクロンの過去平均は10%台前半、SK HynixとSamsungは一桁台後半だったのに対し、「Nvidiaよりも、TSMCよりも高い」水準にある。転換は既に明確だ。「誰もがNvidiaを気にしていた状況から、誰もがマイクロンを気にする状況へ」The Six Five, 6月29日)。メモリーを保有していなければ、このトレードには乗れていないことになる。

2. 強気・弱気の対立軸は「コモディティかどうか」という一語に集約された。 The Six Five, 6月29日、Patrick MoorheadとDaniel Newman。

メモリーメーカー業界に21年在籍したMoorheadは懐疑的な立場だ。長期契約は*「今が好況の局面にあるコモディティであることを、むしろ強く示している」とし、新規供給(中国のDDR5増産が2026年後半に本格化)や価格の「より正常な水準への回帰」を指摘する。強気派の反論は、顧客が2030年まで複数年にわたる価格を固定しているという事実であり、暴落を見込んでいればそんなことはしないはずだというものだ。Newmanは、メモリーは今や「戦略資産の条件をすべて満たしている。供給制約、技術的な参入障壁、非弾力的な需要、長期契約による販売」*だと語る。

3. 2028年の供給過剰こそが本当に新しいリスクだ。 The Circuit, 6月29日

注視すべき「トレード崩壊の引き金」がここにある。市場モデルでは、マイクロンが2028〜29年にかけてSK Hynixとほぼ肩を並べるウエハー生産量に達するとされ、現行の約20%のシェアが倍増する可能性もある。これは「勢力図を完全に塗り替える」ことになる。シェアを奪いにいく誘惑は極めて大きい一方、「はるかに潤沢な資本」を持つ2社のライバルとの*「戦争を招きかねない」*リスクもある。サムスンが数千億ドル規模の増産計画をあえて「リーク」したのも、市場を圧倒できるという牽制の意味合いがある。番組出演者らは、マイクロンが均衡的な粗利率の下限(65〜70%程度)をあらかじめ示すことで、カルテル的な協調を保つべきだと指摘する。それが実現するまで、2028年の供給問題は相場の重荷であり続ける。

4. クアルコムがデータセンター市場に参入し、HBMを完全に省いた。 The Six Five, 6月29日

ヘッドノード用、汎用、エージェント処理用の3種類のデータセンター向けCPUと、「LPDDRスタックの下で演算を行う」アーキテクチャは、「HBMと非常に近い機能を、大幅な低コストで」実現する。MicrosoftとMetaが採用を決定し、チップはすでにテープアウト済みだ。より大きな驚きはネットワーキング分野で、Alpha Wave経由で現在800Gが量産中、2026〜27年に1.6T、2028年には3.3Tの光通信を予定する。クアルコムは2029年の非ハンドセット事業収益目標を倍増させた(年平均成長率20%から約40%へ、220億ドルから400億ドルへ)。重要なのは、*「クアルコムはHBMすら使っていない」*という点であり、これはメモリー税とNvidiaのHBMマークアップに対する直接的なコスト面での挑戦だ。

5. GoogleがひそかにMetaへのGemini向け処理能力供給を絞り込んでいた。 TBPN, 6月29日

番組で引用された報道によれば、Googleは3月頃、Metaに対して希望する*「Geminiの処理能力をすべては提供できない」と伝え、「Meta社内のAIプロジェクトの一部に支障や遅延が生じた」という。出演者らはこれを、「Googleにとって極めて強気なシグナルだ」*と読む。Cloud事業は需要不足ではなく供給能力の制約に直面しているというわけだ。一方Metaは、社員に対して「AIトークンをより効率的に使う」よう求め始めている。

論点:強気vs弱気

強気派:メモリーは構造的に再評価された。それを証明するのが契約内容だ。 マイクロンの決算締め後もスポットDRAM価格は加速しており、下落の兆しはない(Real Vision Macro Mondays, 6月29日)。顧客は2030年まで見据えた価格設定を行っており、Appleはコスト抑制のために禁輸対象である中国製メモリー(CXMT)へのアクセスを求めてトランプ政権にロビー活動を行っている(Morning Market Briefing, 6月29日)。これは供給過剰の兆候ではない。

弱気派:依然としてコモディティ・サイクルであり、決算内容の一部は演出されている。 Moorheadの言う「好況局面にあるコモディティ」という見方に加え、2028年の供給拡大という壁は、先週の需要論よりもすっきりとした空売りのシナリオになっている。循環取引的な資金調達への懸念も根強く、彼は新たな戦略的契約について*「ベンダーファイナンスだ……見た目は良くなるが、持続可能なフリーキャッシュフローではない」と指摘する(The Six Five, 6月29日)。これはMan GroupのEd Coleが「バリュエーション・バブルというより収益バブルだ」と呼んだのと同じ循環構造だ(Merryn Talks Money, 6月29日)。一方で、コストを転嫁できないモデル提供各社は入力コストの上昇に直面しており、「損失が拡大するか、値上げが必要になるかのどちらかだ」*という声もある(TBPN, 6月29日)。

注視すべき売りシグナル: マイクロン(あるいは競合他社)が2028年に向けて積極的な価格でのシェア争奪戦を仕掛けるかどうか、メモリーのスポット価格がついに反落するかどうか、ハイパースケーラーが7月決算でトークン支出の上限を確認するかどうか、あるいはクアルコムのHBM不要アーキテクチャが具体名の大口案件を獲得するかどうか。

注目銘柄

NVDA。 強気材料: いまだAIトレードの演算基盤であり続けており、250億ドルの投資適格債を3〜4倍の応募超過で調達したのは「余裕を示す動き」であって必要に迫られてのものではない。弱気材料: 相場では「動かない銘柄」との見方があり、外部調達HBMに対する約70%のマークアップは、AMD、Broadcom、そして今やクアルコムまでもがそのコストを負担していないことを踏まえると脆弱に映る。次のイベント: 7月中旬にTSMC、8月に第2四半期決算。(The Six Five

AVGO。 強気材料: Sam AltmanとHock Tanが、OpenAI向け推論チップ「ハラペーニョ」を披露した。フルウエハーとパッケージ化ダイ(HBM3E搭載の可能性)を含む。弱気材料: 量産出荷に至るまでは依然として先行期待にとどまる。次のイベント: カスタムシリコンの量産立ち上げ。(The Six Five, 6月29日

AMD。 強気材料: Nvidiaが課すHBMマークアップを負担せず、「どこでもXPU」というテーゼは今やコンセンサスになりつつある。弱気材料: 今週はロードマップ面で静かで、クアルコムとOpenAI向けチップにカスタムシリコンの話題を奪われた。次のイベント: 2026年7月開催のAMD Advancing AI Day(MI450X/Heliosの発表)。

MSFT。 強気材料: クアルコムのHBMより低コストなデータセンター向けアーキテクチャの採用を決め、実質的な入力コストのヘッジとなっている。弱気材料: 支出負担の大きいバランスシートにメモリー費用の上昇が重くのしかかる。次のイベント: 7月決算でのFY26第4四半期の設備投資ガイダンス。(The Six Five, 6月29日

GOOGL。 強気材料: Geminiの処理能力供給でMetaを絞り込んでおり、Cloud事業は需要不足ではなく完売状態にある。TPUは依然としてコスト面での切り札だ。弱気材料: Gemini単体の収益は開示されておらず、マネタイズは未証明のまま。次のイベント: 7月の設備投資ガイダンス。(TBPN, 6月29日

AMZN。 強気材料: (現在はクアルコム傘下となった)Alpha WaveはAmazon向けのネットワーキングIPの中核サプライヤーであり、Trainiumの自社設計テンプレートは健在。弱気材料: 相場では動きが乏しい。次のイベント: 7月決算。

META。 強気材料: クアルコムの低コストメモリー・アーキテクチャの採用を決めた。弱気材料: Googleに Geminiの処理能力供給を絞られ(社内プロジェクトが遅延)、かつ社員のトークン支出を制限しつつあり、支出負担が重い状況で両方向から圧力を受けている。次のイベント: 7月決算。(TBPN, 6月29日

波及効果(Read-Throughs)

  • メモリー/HBM(MU、SK Hynix):いまやトレードの中心にあり、2028年という導火線を抱える。 粗利率は75〜85%、スポット価格も依然として加速中だが、マイクロンの増産計画にサムスンのリーク、CXMTの歩留まり改善が重なり、初めて信頼に足る価格戦争シナリオが出そろった。SK Hynixの7月10日頃予定のNasdaq上場が次の流動性テストとなる。(The Circuit, 6月29日
  • カスタムシリコン/ネットワーキング(QCOM、AVGO、MRVL、ALAB、CRDO)。 クアルコムのAlpha Wave SerDesロードマップ(800Gから1.6T、2028年に3.3Tへ)は、ネットワーキングが次の主戦場になろうとする中で存在感を示した。具体名を伴うHBM不要のハイパースケーラー案件が出てくるかに注目。(The Six Five, 6月29日
  • 中国の代替供給元/自国生産能力。 Appleは CXMTへのアクセスを求めてロビー活動を行っており、韓国は今後5年間でメモリーに約5,000億ドルを投じると報じられている。いずれも2026年ではなく2028年の供給論を補強する材料だ。(Morning Market Briefing, 6月29日
  • 電力/冷却(VRT、ETN):相場は静か。 ERCOT/SB6関連の新しい材料はなく、建設可能なテキサスのパイプラインの目安として7月15日のSB6保証金期限が引き続き注視されている。

前号からの変化

前号(6月29日、「トークン代の請求が来る。揺らぐ需要。」)は需要と資金調達をめぐる話だった。マイクロンの決算がそれを一気に供給側の議論へと引き戻した。

  • 強気材料に強力なデータが加わった。 DRAM前四半期比+60%、NAND+80%、粗利率75〜85%、営業利益でNvidiaを上回る可能性、価格は2030年まで固定。メモリーは「インフラとして再評価された」。
  • 弱気材料の焦点が移動した。 先週の需要論(トークン上限、Lenovo CFOの月間1億ドル発言)から、供給論へ。2028年に向けたマイクロンの増産、サムスンの容量リーク、「粗利率の下限」をめぐる議論だ。これまで記録した中で初めて、信頼に足るメモリー価格戦争のシナリオが出そろった。
  • 新たな構造的脅威が浮上した。 クアルコムのHBM不要データセンター参入に、MicrosoftとMetaが名を連ねた。これはメモリー税とNvidiaのHBMマークアップを狙い撃ちする動きだ。GoogleがMetaへのGemini供給を絞っている事実も、買い手側から見た需給の逼迫を裏付けている。
  • 大枠の数字。 5社合計の支出規模は約8,000億ドルとやや大まかに語られたが(Bloomberg Surveillance, 6月29日)、確定的なガイダンス変更は特になし。NVDAの250億ドル調達とSK Hynixの7月10日上場が次の材料となる。AVGO(ハラペーニョ以外)、AMD、AMZNはおおむね静かだった。