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解約の雪だるま現象と『地味こそ美しい』トレードの衝突

2026年7月1日号のプライベートクレジット&オルタナティブ・ニュースレター。ゲート(償還制限)が四半期を追うごとに雪だるま式に膨らむ中、リテール解約が初めて純新規流入を上回り、SECは月次流動性を承認した。一方、最も信頼できる運用会社はダイレクトレンディングのプレミアム縮小を認め、アセットベース・ファイナンスへとシフトしており、ソフトウェア関連エクスポージャーが共通の断層線となっている。

プライベートクレジット&オルタナティブ

2026年7月1日:解約の雪だるま現象と「地味こそ美しい」トレードの衝突


今週の論調は真っ二つに割れた。評論家たちはウェルスチャネル向けファンドで解約の雪だるまが膨らむ様子を注視し、プライベートクレジットがバブルを弾ける針になるのではと問うている。一方、Oaktree、Oak Hill、Fidelityといった運用会社側は、もっと静かなテーマに時間を割いた。スプレッド縮小、コベナンツの劣化、そして実際のリスクがどこに潜んでいるかだ。際立っていたのは、誰が語らなかったかである。Apollo、Blackstone、KKR、Ares、Blue Owlのシニア幹部は、自社の旗艦ファンドがゲート(償還制限)にかけられている最中にもかかわらず、誰一人としてポッドキャストに登場しなかった。今週に限っては、この沈黙自体が一つのデータポイントだ。

TL;DR

  • リテール解約が、このアセットクラスの短い歴史で初めて純新規流入を上回り、四半期あたり5%の上限によるゲーティングが四半期ごとに雪だるま式に膨らんでいる。J.P.モルガンの答えは月次流動性で、SECがこれを承認した。
  • 最も信頼できる運用会社は、ダイレクトレンディングのスプレッドを擁護するのではなく、プレミアムが200bps超から100bps未満へ縮小したことを認め、アセットベース・ファイナンスやコベナンツで保護された伝統的ミドルマーケット案件へとシフトしている。
  • ソフトウェア(ダイレクトレンディング市場の約20%)が断層線だ。AIによる破壊的変化と2020〜2022年ヴィンテージのレバレッジが重なる領域こそ、運用会社側と悲観派の評論家が実際に一致している点である。

What's New

1. 解約の算数がついに逆転した。 Money Stuff: The Podcast(6月26日)で、BloombergのMatt LevineとKatie Greifeldが現状を整理した。Morgan StanleyとApolloの解約請求は「すべて10%超」で、「すべて5%で上限にかけられている」という。Levineの言葉を借りれば、「制度は設計通りに機能している」が、ゲーティングは滞留を生み、「そこから雪だるま式に膨らんでいく」。焦点となっている解決策は、J.P.モルガンによる四半期ではなく月次の流動性への移行で、SECは「月次は四半期より明確に優れている」という論理でこれを承認した。Levineの指摘は直感に反するものだった。より頻繁な流動性提供はむしろ投資家の解約需要を減らす可能性がある、なぜなら解約の判断が四半期単位の重いコミットメントではなくなるからだ。

2. Oaktree曰く、消えたプレミアムに対価を払うのはやめよ。 最も鋭い運用会社側のコメントは、Oaktreeの Danielle PoliからAlt Goes Mainstream(6月25日)で発せられた。彼女のテーゼは「地味こそ美しい(boring is beautiful)」という旗印のもとに語られた。すなわち、流動性のあるクレジットに対するダイレクトレンディングのスプレッドは「200超」から「100以内」へと「縮小」しており、流動性を手放す対価として然るべき見返りを得るべきだという。彼女がシフトしているのは、「コーポレートクレジットリスクとは無相関」で契約キャッシュフローが囲い込まれたアセットベース・ファイナンスだ。穏やかな表面の下にあるストレスについては、CCC格レバレッジドローンのスプレッドが年初来で約300bps拡大し、利回りは「25%を超える水準」に達しており、修正PIK(現物払い)は「11%、12%くらいの高水準」にある一方、流動性のあるデフォルト率は3〜4%にとどまるという。Oaktreeは一部ファンドで市場平均約20%に対しソフトウェア比率をわずか4%に抑え、柔軟型ポートフォリオの3分の2を流動性のあるクレジットで保有している。

3. 「準流動性」は流動性ではない。 Oak Hill AdvisorsのEric Mullerは、iCapital Connectから生出演したAlt Goes Mainstream(6月30日)で、解約を駆り立てているリテール側の誤解について率直に語った。「みんな『準流動性』と聞いたが、それを『流動性』と聞き違えた……ポートフォリオに流動性が必要なら、そこは本来求めるべき場所ではないはずだ」。Mullerは約1,100億ドル規模のOHAプラットフォーム(うち500億ドルは個別口座)を運用しており、四半期あたり5%の上限を「運用会社が不利な投げ売り価格で非流動資産を売却させられることから守る」機能だと位置づけた。サイクルの転換点についての見立てはこうだ。「流入が減っているこの局面にこそ、人々がどう振る舞うかが見えてくる」、リレーションシップ型の貸し手か、取引型の貸し手か、が試されると。

4. 「大きいほど良い」への反論、Fidelity。 Alternative Angles(6月30日)にて、ダイレクトレンディング部門責任者のDavid Gatoは、業界の成長がアッパー・ミドルマーケットに集中し、上位10社の運用会社は借り手あたり平均約2.5億ドルのEBITDAとなり、優位性が存在する売上30百万ドル未満の伝統的ミドルマーケットを置き去りにしてきたと主張した。彼の決定的な統計は、損失控除後リターンのばらつきが「アッパー・ミドルマーケットの約1,200bpsに対し、中700bps台」であり、規模の小さい層の方が高いリターンを上げているというものだ。構造的な劣化についても言及があった。ブロードリー・シンジケーテッド・ローンは現在90%がコベナンツ・ライトで、アッパー・ミドルマーケットのレバレッジはしばしば「6倍、7倍」から始まり、PIKについては「良いPIKなど存在しないと思う」と述べた。

5. リテール・パニック版の物語。 この物語が一般投資家層にどう伝わっているかを知る手がかりとして、世代間資産・不動産系番組First of the Family(6月30日)のKitti Sisters(クレジット運用会社ではない)は、Bain Capitalが運用するCLOがFitchによってデフォルト格付けに引き下げられたと主張し、これを2008年以降の規制下にあるCLOとして初のデフォルトだと位置づけた。彼女たちはJ.P.モルガンの試算として「AI/ソフトウェアの破壊的変化にさらされているCLO内ローンは400億〜1,500億ドル」を、またUBSのモデルとして13%のデフォルト率を引用した。この具体的なデフォルト主張自体は、リテール系評論家による未検証の言説として扱うべきだが、その方向性は運用会社側がソフトウェアについて語っている内容と符合している点は注目に値する。

The Debate

プライベートクレジットはバブルを弾ける針なのか。「ノー」の最有力な論拠はUnf*cking The Republic(6月28日)から来ている。ホストのMaxは冒頭で「ノー。そもそも問い自体が間違っていると思う」と切り出した。彼の集計はポッドキャスト界で最も網羅的だ。Ares Strategic Incomeは株式の14%が解約請求され上限にかけられ、Apollo Debt Solutionsは16%、Cliffwaterの旗艦ファンドは17%、Blackstoneの BCRED(500億ドル超)は10%で「史上初めて」ゲートがかかり、Morgan StanleyのNorth Havenは11.6%、BlackRockのHLENDは13%、Blue Owlは第1四半期に22%だった。それでも不良債権化率は「2%から3%」にとどまり、ローンは「概ね98セント」で値付けされている。彼の結論は、これらはクレジット主導ではなくセンチメント主導の解約であり、Fed自身が想定する全面取り付けシナリオでも大手銀行のエクスポージャー増は約360億ドル、「中核資本のわずか約2%」にすぎないというものだ。「イエス」側の最有力な論拠は悲観派の評論家からではなく、運用会社自身から出ている。PoliのPIK修正・CCCデータ、そしてソフトウェアの約20%というウェイトとAIの破壊力が本物の、想像上ではない穴であるという共通見解だ。

沈黙が語るもの。 今週、大手オルタナティブ運用会社の幹部で自社ファンドを擁護するために登場した者は皆無だった。保険会社のバランスシート・パートナー(Athene、Corebridge、F&Gなど)に関する運用会社側のコメントもなく、401(k)/確定拠出年金アクセスに関する政策的な声もなく、NAVレンディングやGP主導のセカンダリーに関する言及もなかった。解約が相次ぐ週に、当の解約されている側からマイクが空白のままだったことは、注目に値する。

The Names in Play

  • T. Rowe Price (TROW) / Oak HillGoldman Sachs (GS):Mullerは、T. Rowe との合併を通じたOHAのウェルスチャネル構築と、プライベートクレジット・PE・不動産・インフラを1つのティッカーにまとめたGoldmanとの新しいマルチアセット・オルタナティブ商品について詳述した。解約の最中でも、流通網の陣取り合戦は続いている。
  • ポッドキャストで名指しされたゲート対象の旗艦ファンド:Blackstone(BCRED)、Apollo(Debt Solutions)、Blue Owl、Morgan Stanley(North Haven)、BlackRock(HLEND)、Ares(Strategic Income)。Money Stuffは、アドバイザーによって今まさに仕掛けられている裁定取引にも言及した。非上場BDCをNAV100セントで解約し、上場している姉妹ファンドを、あるアドバイザーが示した「24〜27%」ディスカウントで買う、というものだ。「これは哲学的な議論ではない。単なる算数の問題だ」。
  • Oaktree(Brookfield)Fidelity:どちらも混雑したアッパー・ミドルマーケットから距離を置く方向にポジショニングしている。OaktreeはABFへ、Fidelityは自社のパーペチュアルBDCを通じて売上3,000万ドル未満のコベナンツ保護型案件へと向かっている。

Read-throughs

  • アセットベース・ファイナンスは、質の高いクレジット運用会社の間で「逃げ場」トレードとしてコンセンサスになりつつある。ダイレクトレンディングからABFへの配分フローの変化に注目したい。
  • ウェルスチャネルは縮小しているのではなく、作り直されているのだ。月次流動性、単一ティッカーのマルチアセット・ラッパー、アドバイザー主導のフローこそが、解約という見出しの裏にある構造的な物語である。
  • コベナンツとPIKが実態を映す指標だ。2026年下半期に一つだけ数値を追うなら、サイクル高値に近づいている修正PIK率にすべき。
  • ソフトウェア・エクスポージャー(ダイレクトレンディングの約20%)は、強気派と弱気派に共通する断層線である。

What Changed

初めて、解約請求が純新規流入を上回った。SECは月次流動性を承認した。そして、非上場BDCから上場BDCへの裁定取引は、ヘッジファンドのアイデアからアドバイザー推奨のリテール行動へと変わった。これは、ウェルスチャネルのNAV評価に対する信頼が揺らぎ始めている兆候だ。