Newsletter · · Ashutosh Agarwal
シートは死につつある。では堀は?
2026年7月3日〜9日のスタートアップ・ベンチャー週次ニュースレター。AIエージェントが殺したのはSaaSそのものなのか、それとも単に座席課金という値札だけなのか、VC界隈の議論が二分した。弱気派はGartnerの2,340億ドルという試算と、売り手自身が自社モデルから逃げ出している事実を挙げ、強気派は堀はそもそも座席ではなかったと主張する。
The VC Read
2026年7月9日の週: シートは死につつある。では堀は?
シートは死につつある。堀もそれと一緒に死ぬのかどうかが今週のVC界隈を食い尽くした論争であり、珍しく両陣営とも根拠となる証拠を携えていた。
今週の大論争: AIエージェントが殺したのはSaaSそのものか、それとも値札だけか
2年間、「SaaSは死んだ」は単なる空気に過ぎなかった。今週、そこに数字と反論がついた。
Dave Sobelがきれいに整理した弱気論はこうだ。エージェントは製品と、それに対価を払う人間とを切り離す。Gartnerは今や、2030年までにエージェント型AIがSaaS支出の2,340億ドル、つまり企業がサブスクリプションに費やす全支出のおよそ20%に影響を与えうると見積もっている。そのメカニズムは一種の裁定取引だ。「AIエージェントは複数のシステムを横断してタスクを完了させる……エージェントはシートを買わない。」Sobelにとっての決定的な兆候は、この予測そのものではなく、売り手側が自社のモデルから逃げ出している現実だ。Notionは正常に機能していたメールクライアントを廃止したが、その理由は「AIエージェントがすでにその仕事をこなしているから」。マイクロソフトはコンサルタント6,000人規模の「Frontier」サービス部門に25億ドルを投じた(アマゾンはその2日前に10億ドルを投じている)。そしてOpenAIのリークした監査済み財務諸表は、ソフトウェア収益について「1ドル稼ぐごとに1.60ドルを使っていた」ことを示している。「価値はソフトウェアそのものに宿ったことは一度もない」とSobelは主張する。「価値はソフトウェアが人の仕事を助けていた、その仕事の中に宿っていた……エージェントはそれを外しただけだ。」
強気派は、シートはそもそも堀ではなかったと反論する。a16zでは、エンタープライズ担当パートナーのSeema Ambleが率直に語る。「PostgresデータベースとAPIさえあれば、あっという間にSAPを置き換えられる」という誤解は「完全に間違っている」。「あのロジック周りの部分……そこの方がはるかに、はるかに重要だ。」Steven Sinofskyはエンタープライズソフトウェアにおける最古の真理を付け加える。「最も粘着性の高いソフトウェアとは、どこかで実際に使われているソフトウェアだ。」そして、バイブコーディングだけで既存大手を出し抜けると考えるのは「とんでもない過小評価」だと警告する。USVのMike Mignanoは、Abridgeが医療分野の規制を約10年かけて地道に突破してきた例を挙げる。「それが結局は一種の堀になる。」PremiseのVanessa Larcoは「ラッパー」という蔑称を気にしない(「Kayakもラッパーだった」)、そして古くからの堀(ネットワーク効果、独自データ、統合、チェンジマネジメント)は「ここでも依然として当てはまるし、依然として構築には時間がかかる」と主張する。
正直な見立てはこうだ。両者とも正しいのかもしれない。座席課金という値札は末期的に見えるが、その下にあるソフトウェア自体はそうではない。
シグナル
- 犠牲になっているのは価格モデルであってコードではない。業界全体が座席単位からアウトカムとサービスへと猛スピードで移行しており、SobelはWSJがコンサルティング業界の「時間課金からの混乱した撤退」を描いた記事に触れている。デロイトは労働ベースの業務が大きく縮小しかねないと警告する。オペレーター側の視点からも、Andres Klaricが同じ見立てを示した。「ピークSaaSの終焉」、座席課金・従量課金がアウトカムに基づく責任へと道を譲りつつあるという。Business of Tech - 「AIエージェントが座席ベースSaaSを侵食: マイクロソフトとOpenAIはサービスへ転換」(7月7日); BRAVE Southeast Asia Tech - 「ピークSaaSの終焉とアウトカムベースソフトウェアの作り方」(7月6日)。
- 「重要なのは成長だけ。他は何も関係ない。」Jason Lemkinが今のベンチャー市況を要約したこの言葉は、品質を売り込みたい者にとっては暗い話だ。粗利率、経常収益、複数年契約、「ノー」。犠牲になっているのは、堅実だが超高成長ではないソフトウェアだ。「18か月前なら資金調達できていたはずの、非常に良い成長を見せている顧客企業が、今日では資金調達できない。」かつてNRR120%の10-to-20企業は確実な案件だったが、「今やこのSaaSポカリプスのせいで、そうした確実なものが非常に不確かに見える。」SaaStr - 「SaaStr 866: エージェントは営業を殺していない。ただそれを露呈させただけだ」(7月8日)。
- AIバブル弱気派の声はより大きく、より具体的になった。Scott Gallowayは政府によるOpenAI出資を「企業史上最大の救済措置……あれは[投資]ではない。救済措置だ」と呼び、この建設ラッシュを「1999年の光ファイバー過剰建設」になぞらえ、無料の中国製モデルが「わずか半年でAIトラフィックの30%から60%へ」広がったと指摘した。Ed Elsonの数字: OpenAIは「130億ドルを稼ぎ、340億ドルを使っている」。数日前、Ed Zitronは2つのラボがAIコンピュートの需要の約80%を占める一方、推論収益はそのごく一部にすぎないと論じた。Prof G Markets - 「OpenAI、政府による救済を求める」(7月6日)と「AI取引がMetaから警告を受けた」(7月2日)。
- VCは何に投資するかだけでなく、どう審査するか自体を見直している。Mignanoの今週の問題提起: VCは「AI時代には価格と持分比率への比重を下げる」べきであり、持分の計算よりも確信とアクセスを重視すべきだという。そしてファンドモデル自体も圧縮されつつある。Larcoはメモ、KPI、研究開発を備えた2人体制でPremiseを運営しており、「みんな『おお、1人で作る10億ドル企業か』って言うけど、じゃあ『2人の女性で作るトップデシルのファンドはどうなんだ』って私は思うわけ。」20VC - 「なぜ今がアプリケーションレイヤーの時代なのか……USVのMike Mignanoとともに」(7月6日); The GTMnow Podcast - 「VC: 2人のファンドがスタートアップのように運営される方法……PremiseのVanessa Larco」(7月8日)。
- 経験豊富な強気派がパニックに反論する。Kleiner PerkinsのMamoon Hamidは、「SaaS終末論」への恐怖は誇張されており、企業は依然としてソフトウェアを購入し続けており、Harveyのような企業は基盤モデルの上に積み上げた「秘伝のソース」によって防御力を築いていると論じる。Masters in Business - 「AI革命下のベンチャーキャピタル、Mamoon Hamidとともに」(7月3日)。
今週の引用
「自動化するな、粉砕せよ。」USVのMike Mignanoの言葉で、既存市場を単に速くするだけの企業よりも、市場そのものを再発明する企業を支援したい理由を語ったもの。20VC - 「なぜ今がアプリケーションレイヤーの時代なのか……USVのMike Mignanoとともに」(7月6日)。